2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『故郷』魯迅

(印象に残った場面とその理由) 『故郷』において、魯迅は、身分制度に対する悲しみと、将来の子供たちに対する希望をやや屈折しながらも描いたように思う。さて、今回改めて『故郷』を読んで気になったことは、ルントウが食器を灰の中に隠していたというこ…

『薬』魯迅

(印象に残った場面とその理由)『狂人日記』全体から、或いは『狂人日記』の人間の顔についての描写:「ある者はいつものように青い顔をして歯をむき出し、にやにやと笑っている。」(p22)等から、(人は本当は獰猛で、凶悪で、また狂暴な動物である)…

航跡もなし

世の中を何に譬へむ朝開き漕ぎ去にし船の跡なきごとし 沙弥満誓(万葉集 巻3 351)世の中を何に譬えよう。夜明け、海に漕ぎ出て行った船の航跡さえ残ってはいない、そんなものだろうか。 有名な歌。船は苦手であまり乗らないのだが、航跡というのは、どのく…

『孔乙己』魯迅

(印象に残った場面とその理由)『孔乙己』が、茴香豆の茴の字の書き方を訊く場面―まず「読んだことがある…それじゃわたしが試験をしてやろう。茴香豆の茴の字は、どう書くかね」と訊き、『わたし』が質問に面倒そうにも答えるとさらに熱心に「そうだそうだ…

梅の花

春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる 凡河内躬恒(古今集 巻1(春上) 41) 春の夜の闇は、何を隠そうとしているのだか、わけがわからない。 梅の花は、その色こそ見えないけれども、その香は隠れたりするものか。

人にしられぬ花

三輪山をしかもかくすか春霞人にしられぬ花やさくらむ 紀貫之(古今集 巻2(春下) 94) 三輪山を、そのようにも隠すのか、春霞よ。人に知られぬ花が咲いているのだろうか。 人が全てを知っている世界というのは、きっとつまらないものではないかと思う。知…

春の園

春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子 大伴家持(万葉集 巻19 4139)春の園に紅色に美しく輝いている桃の花。その樹の下、照り輝く道に出てたたずむ乙女よ。