『薬』魯迅

(印象に残った場面とその理由)

狂人日記』全体から、或いは『狂人日記』の人間の顔についての描写:「ある者はいつものように青い顔をして歯をむき出し、にやにやと笑っている。」(p22)等から、(人は本当は獰猛で、凶悪で、また狂暴な動物である)という魯迅の人間に対する見方を垣間見るこができる。また、(しかしそれは、世俗に染まった人間にはなかなか理解しがたく、さればこそ狂人にしかわからない。)ということを付け加えても良さそうに思う。

さて、本作初めの方の部分(p37)に闇の中で老栓の見た人の「眼からつかみかかるような光がほとばしっていた。」(p37)とあるが、処刑された人の『赤いもの』が『したたり落ち』る『真っ赤な饅頭』(p38)を買おうとしている老栓は、自分自身を通じて、人間の本性の姿を感じたのかもしれない。

また、作品全体を通じて、こうした人間の負の面が大写しにされているように思う。