『故郷』魯迅

(印象に残った場面とその理由)
『故郷』において、魯迅は、身分制度に対する悲しみと、将来の子供たちに対する希望をやや屈折しながらも描いたように思う。

さて、今回改めて『故郷』を読んで気になったことは、ルントウが食器を灰の中に隠していたということ。そもそも、私はルントウに何でも呉れてやろうとしていたのだから、ルントウは食器も欲しい旨を申し出れば良かったのではないか。上位の階級の者のみならず、下位の階級における者のこうした行動も、身分制度の壁を壊し難くしてしまっている要因の1つである、ということを身分制度の中に息づいているヤンおばさんを通して鋭く抉っている。

また、最後の、希望とは道のようなものだという記述はそれ以前の部分の話の内容から随分離れていて、一見すると不要な部分のようにも見える。この部分の書かれている意義については考えてみたいと思う。