万葉集

石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも 志貴皇子(万葉集 巻8 1418)岩を叩いて流れ落ちる滝のほとりにある早蕨が、 芽吹き始める春になったんだなあ。 長い冬が終わり、春の足音を見つけた喜びが表現されている。

狭野のわたりに

苦しくも降りくる雨か三輪の崎狭野のわたりに家もあらなくに 長忌寸奥麿(万葉集 巻3 267) 困ったことに、雨が降ってくることだよ。三輪の崎の狭野の渡し場には、雨宿りしようとも家1軒もないのに。 小・中学校に通っていた時分の教科書等を処分しようと思…

さらさらに

多摩川にさらす手作りさらさらになにぞこの児のここだかなしき 東歌(万葉集 巻14 3373) 多摩川にさらさら さらす手織りの麻布ではないが、今さらながらどうしてこの娘はこんなに可愛いのだろう。 副詞「さらさら」には、改めて、ますます・いっそう等の意…

防人の歌

防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず 防人の妻(万葉集 巻20 4425) 今年防人に行くのはどこの旦那かと尋ねる人を見る、この妬ましさよ。 夫をとられる私のように思い煩うこともなしに。 「羨(とも)しさ」の訳はここでは「妬ましさ」…

白玉は

万葉集から。 白玉は 人に知らえず 知らずともよし知らずとも 我し知れらば 知らずともよし 元興寺の僧(万葉集 巻6 1018) 真珠は人に知られない、しかし人が知らなくてもよい。 人が知らなくても、自分がその自分の値打ちをわかっているのならば、知らなく…