幸くあれ

父母が頭掻き撫で幸くあれて

言ひし言葉ぜ忘れかねつる


          丈部稲麻呂(万葉集 巻20 4346)


別れ際に、父と母とが私の頭を撫で回して、「達者で」と仰った、 

その言葉が今も忘れられないのです。



「幸くあれ」の読み。

「さきくあれ」だと思っていたのだが、この歌では「さくあれ」と読むようだ。


言葉というのは、空気や紙(或いは液晶画面)を通して、自分の思いを伝えるための手段にすぎない。

しかしながら、言葉なくして人に自分の思いを伝えることはできない。

それゆえ、人は伝えたい思いを言葉に託すのだろう。